LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2026 RE:boot 通し稽古レポート

LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2026 RE:boot が、いよいよ2月7日(土)に新宿・THEATER MILANO-Zaにて開幕。ライブイベントも含めてシリーズ4回目の「舞台ぼっち」となる今回は、アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の1期の内容を1本に再構築した「リブート版」。2023年8月の初演、2024年9月の再演・続編で上演されたストーリー2本分を凝縮した作品だ。また、出演キャストによるライブイベントもおこなわれ、同日にこれらが両方楽しめる日も設定されている。

本番を間近に控え、バンド練習・舞台稽古ともに佳境。稽古場は、ほどよい緊張感がありつつも、笑顔が絶えず明るさいっぱいだ。そんな中、2日間にわたっておこなわれた通し稽古とLIVEの通しリハの様子をお届けする。


1月下旬。LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2026 RE:bootの通し稽古とLIVEの通しリハが都内の稽古場でおこなわれた。稽古場内には、お馴染みの階段をはじめとした、過去におこなわれた公演でも使っていた数々のセットとバンドセットが所せましと並べられている。

通し稽古開始の30分前、セットの前や演出卓周辺など、あちこちでスタッフたちが集まり、これからおこなわれる通し稽古についての打ち合わせが始められていた。すでに集まっていたキャストたちは、柔軟体操をしたり、セリフの確認をしたり。台本も、タブレットで持つ者、紙に書き入れる者などさまざまだ。





時間前にキャストたちへ少し声をかけてみると、伊地知虹夏役の大竹美希は「まだまだ足りません、もっと稽古をやっていきたいです」と自分を叱咤する言葉を口にする。後藤ふたり役の津久井有咲と天野叶愛は「(2人で)偶然同じのを買ってたんです!」と無邪気な笑顔でお菓子を見せてくれた。そのままお菓子を配り始める2人に、初の通し稽古に若干の緊張感が見えたキャストたちも自然と笑顔になっていく。





「通しの前に、“きっかけ”をいくつか確認します」と脚本・演出の山崎が皆に声をかけた。初演、再演とすでに公演をおこなっていても今回は「リブート版」。リブート(再構築)の名のとおり、脚本と演出の全体に手を入れ構成を組み直して、ブラッシュアップしている。そのため、変更のある個所は入念に。変更がなく過去作のまま生かされているシーンも、もっと良くするためにやれることはないだろうか? と丹念にチェックを繰り返していく。

劇場での客入れBGMがかかり、稽古場が本番と同じ空気になったところで通し稽古が始まった。生き生きと踊り、物語の世界観を伝えるぼっち~ずの後ろで出会う後藤ひとり(ぼっち/守乃まも)と伊地知虹夏。導入からスピード感あふれる展開、しかし突っ走りはしない。緩急をつけて、テンポよく話が進んでいく。思い切った手入れもあるが、物語の“核”となるシーンや出来事、セリフなどは外していない。

過去作を観ていたファンはもちろん、今作で初めて「舞台ぼっち」に触れる原作ファン、原作を知らずに舞台で初めて「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界に触れるファンも取りこぼさず、置いて行かず、この世界を一緒に楽しもう! という思いが伝わってくる脚本だ。

ライブイベントも含めると後藤ひとりを演じるのは4度目になる守乃は、役と自身との奇跡的なまでのマッチングがさらにナチュラルに。自然でありつつも初々しく、「ぼっちを演じられるのは彼女しかいない」の気持ちがさらに強まる芝居と演奏を見せてくれる。



バンドの屋台骨。ドラムの伊地知虹夏役・大竹美希は、圧倒的なドラム技術はもちろん、こちらも役と自身との一体化がより自然になっている。演奏シーンでは、虹夏の焦りや気合の乗ったドラムの圧などが音に乗り、稽古場の空気を制しているのを肌で強く感じた。



ベースの山田リョウを演じるのは小山内花凜。常日頃からリョウへの強い愛を口にしているだけあって、リョウが実際にいたらこうだろう、と感じさせてくれる芝居と演奏だ。舞台や朗読劇への出演も増えていることから、喜多郁代役の大森未来衣とともに芝居を支え引っ張る存在となっている。



ギターボーカル・大森未来衣の清々しく凛とした歌声は、バンドの曲はもちろん、朗々と歌い上げるシーンでも聴く人の心を掴んで離さない。芝居シーンでのほんのちょっとした戸惑いの表情、突っ走るギャグのテンポなどもぜひ見逃さずに注目してほしい。バンド歌唱では、ピンと張った大森の歌声と、クールでありながら鈴の音のような響きの小山内のコーラスが実に気持ちいい。



今作から伊地知星歌を演じる山崎里彩は、引き続きPAさんを演じる堀 春菜とともに大人組としてカンパニーを支える存在感を発揮している。けだるさが魅力のPAさんと、ツンでありながらキュートさが垣間見える星歌さんのシーンにはぜひ注目を。





客席と一体になってコールアンドレスポンスで盛り上がるシーンでリードをするのは、カンパニーのムードメーカーであるピーターピーター。ギタ男などその他の役でも大活躍する。通し稽古であるにも関わらず全力で演出卓をあおり声をかけ、スタッフたちの笑いを誘っていた。



ファン1号(森本さくら)とファン2号(中橋沙里乃)は、観客席と舞台をつなぐ架け橋となり、野田裕貴は後藤直樹・吉田銀次郎、ぼっち~ずとして前作同様に大きな存在感を見せてくれている。野田の存在により「舞台ぼっち」の世界観に、広がりと厚みがさらに出たと同時に、新しい表現が可能になったと言ってもいいだろう。





斉藤瑞季は、後藤美智代、清水イライザ、ぼっち~ずと今作でも大忙しの活躍。この日は衣裳・メイク無しでの芝居だったが、素のままの姿でも母親とイライザというまったく別の人物に見えたのは驚きであった。そのイライザを擁するSICK HACK、廣井きくりを演じる月川 玲は、演奏はもちろん芝居も前作よりさらにパワーアップ。より自然に、ダメな大人とカリスマベーシストであるきくりを演じている。未結奈演じる岩下志麻のドラムの音とリズムが、SICK HACKの演奏シーンをさらに胸躍らせるものに仕上げているのを感じた。







そしてカンパニーに欠かせないのが、津久井有咲と天野叶愛(後藤ふたり/ダブルキャスト)。元気いっぱいの明るさで場を盛り上げるとともに、観客へのアピール、まとめあげる能力など、総じて「しっかりしてる」と感心するばかりだ。





芝居を見ながら、演出の山崎は、特に歌唱シーンでは全体を見るために演出卓の席を離れて後方へ移動していた。遠くからはどう見えるか、どう聞こえるかのバランス調整のためでもあるのだろう。どの席であってもこの物語と歌を受け取れるように、という気持ちが伝わってくる。



この日の通し稽古は、効果音(SE)をつけて。暗転や映像効果は無いが、セットの動かし方とキャストたちの動きは本番を見越したものとなる。1幕の通しが終わっての休憩時間にはスタッフたちが集まり、大きなセットやバンドセットの動かし方などを念入りに調整、確認がおこなわれていた。よりスムーズに、そして分かりやすくするための丹念な調整だ。

2幕の通し稽古の前には、1幕の振り返りと気になった点への指示の時間が設けられた。業界で言うところの、古くは「ダメ出し」、現在では「note」というものだ。「ダメ出し」と聞くと厳しい言葉が飛び交うものだと想像しがちだが、この現場ではまったく違う雰囲気でおこなわれている。

「ここ、よかったです」「最高」「音のタイミングもいいですね」と、山崎はまず肯定と褒めから入る。わずかでも何かをして欲しい時には、キャストもスタッフも納得がいくようにきちんと「こうしたいから、こうしてほしい」と理由を伝えるとともに、効果音のわずかな高さも妥協をせずに「チーンの音、もう少し高く」「あと1秒長く」と驚くほどに微細な部分にまで希望を出していく。この丁寧な指示があってこそ、分かりやすく、心に何か疑問や引っ掛かりを感じることなく感情移入がスムーズにいく舞台が作られる。

中でも「脚本の『……』の部分の芝居をしっかり見せたい。演技をお客さまにもっと届けたい」という山崎の言葉が心に残った。それは脚本に書かれていることだけではなく、アドリブに対しても。「登場人物たちの心の動き方の順番を丁寧に」。山崎のこの発信と、それを受け止めて体現するキャストたちと支えるスタッフの存在があってこそ、この座組がここまでつながってきたのだとあらためて感じる瞬間だった。



それらの気持ちを踏まえての2幕の通しは、より演技に力が入ったように見えた。4人が絆を深める江ノ島、SICK HACKのライブ、秀華祭。山崎の言葉を振り返りながら1本の舞台を観ると、登場人物たちの感情の流れが手に取るように伝わってくるのが分かる。その登場人物たちの感情の動きをより伝えるための手助けとなるのが音楽、効果音、そして劇場に入ってからは照明も。さらにメイク、衣装も加わり、最後には観客が入ってLIVE STAGEは完成する。


翌日は、LIVEの通しリハがおこなわれた。「舞台」とはチェック箇所が異なるものの基本となる部分は変わらない。音が、登場人物たちの気持ちと合っているか、より引き立たせるものとなっているか。LIVEであると同時に、登場人物たちがちゃんとその場にいるように、を意識した構成となっていた。









舞台と比べると音量のバランスと音の響きに、より確認事項とチェック時間が割かれる。ベースから、他の音はどう聞こえているか? ボーカルからは? 演出卓からの聞こえだけではなく、キャスト同士でも音の聞こえ方のバランスを取っていく必要があるのだと感じた。

舞台と同じく、LIVEの通しリハの「note」でも、山崎は「良かったです」とまず褒めから入る。どうだっただろう…と緊張していた様子のキャストたちにも笑顔が見えた。また、舞台上での動き方は、基本的に脚本はあるものの、舞台以上に演者に任されている部分が大きい。そのため、山崎が実際に動いて見せて人物の動きの流れを説明。役者としても活動する、プレイング演出家ならではの指示のやり方だ。



なるほど、と感じた指示のひとつに「セリフの喋り方は、舞台上の人物同士の会話でありつつも観客に呼びかけるように」「そうすることで、客席を巻き込む」というものがあった。舞台以上に、LIVEは客席を巻き込んで作っていくものだ。舞台上だけで完結させない、すべての観客をステージに上げて一緒に盛り上げていくつもりで。そんな気持ちを感じた。

LIVEの通しリハでは、周りで控えているキャストたちはもちろん、演出卓にいる大勢のスタッフたちからも手拍子、歓声、拍手や掛け声が飛ぶ。上にも書いたように、舞台やLIVEは観客が入って完成する。観客席の熱気、盛り上がり、歓声、拍手。それらが渦となって劇場を包み、演者のボルテージを上げていく。音の圧と、ライブハウスとなった劇場の熱気は、やはり劇場の生の現場でしか感じられない。

お馴染みの曲はもちろん、過去の舞台・LIVEでは演奏されていない曲の披露も予定されている。ぜひ、「舞台」で彼女たちの物語を感じると同時に「LIVE」も味わい、生の人間が演じるからこそのLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」の世界を体感してほしい。舞台とLIVE、両方を観て参加してこそ、この物語への没入感が深まること間違いなしだ。

取材・文・撮影 広瀬有希

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